久々に循環器の論文を読んでみた。かなり議論をよんでいるらしい:REDUCE-AMI study
ひさびさのメルマガです。journal clubで取り上げて気になったのでシェア。
論文はこちら:https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2401479
循環器内科医の間でかなり議論を読んでいるらしい、ということで読んでみた。
たしかに議論を呼びそうな内容であった。
心筋梗塞後でEF>50%の患者に対し、ふつうルーチンで入るβ遮断薬は、本当は入れなくていいんじゃないか、ということを調査した研究(ランダム化試験)。
結果、HR=0.9, p=0.64で有意差なし=入れなくてよい、ということを示唆した。
結論だけみると、かなり衝撃的。
でも「悪魔がいないことの証明」は常に難しい。
いろんなポイントはあるけど、自分が一番気になる点はこちら:
・そもそものpower calculationが誤っていた(ことが途中で判明した)が、サンプルサイズはそのままとなった。具体的には、event rateが7.5%程度を見積もっていたら、実際は3%程度しかなかった。本当は2倍以上のサンプルサイズが必要、つまりunder poweredである
・β遮断薬の影響をみる研究なのに、β遮断薬がもともと(心筋梗塞前に)入っていた患者は除外されていない。その上で、β遮断薬を飲むかどうか、心筋梗塞となった後に割り振り直している。つまり一部の患者は、β遮断薬を飲んでいたけど、心筋梗塞後にβ遮断薬を飲まないようassignされた。ふつうは除外すべきでは?
・β遮断薬がもともと入っていなかった患者ではHR=0.85 (95%CI 0.69, 1.06)と効果あることが示唆されていた!
⇒つまり、本来あるべきサンプルサイズでは、β遮断薬がもともと入っていなかった患者に対しては、β遮断薬を導入すると有意な治療効果があったかもしれない。
⇒むしろこれから「効果なし」とは、さすがにいえないのでは??
自分はこれが多分重要なポイントだと思うので、この研究からβ遮断薬が効果なしとはいえない、と思う。
他にも、
・結構な割合のcross-overがあったり
・primary endpointがall-cause mortality + MIであり、β遮断薬がcardiovascular mortality以外のmortalityを予防するわけがないのに、cardiovascular moralityは予防されるどころがβ遮断薬でイベント数が増えていたり(=サンプルサイズ不足の証拠)
・そもそもnon-inferiority trialに設計されていないのが謎
だったりするので、この研究をもって「MI後のEF≥50%の患者にはβ遮断薬はやめよう」とはならないかと思われる。
みなさんはどう思いますか?是非コメントください。
ではまた。