メタ解析の意味についてRCTを計画する立場から考える
Good Morning!
今週のメルマガは「RCTのメタ解析」についてです。多分多くの方が、最も信頼できるエビデンスとして捉えていることと思います。
断言します。
そうとも言えません。
これについてはいくつものポイントがありますが、今回は「新しくRCTを計画する立場」から考えてみます。
これを読む事で、「メタ解析=最強」ではない新しい視点、ベイズ統計の必要性とその立ち位置を理解することができます。
*なお、観察研究のメタ解析は少し違った話となります。ここでは割愛します。
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どんなRCTを計画する?
RCTをやろうと思う時、何を考えるでしょうか。
まずは”Scientific knowledge gap”です。
これは、今までのエビデンスから何が言えて、何が言えていないか、の把握が必須となります。
これをaddressするためのRCTであり、既存のRCTと全く同じデザインになることはあり得ません(当然ですね)。
例えばomega-3サプリのRCTはいくつもありますが、
・異なる用量(1g vs. 4g/dayなど)
・異なる集団(心筋梗塞後 vs. 一次予防集団、アメリカ vs. 日本など)
・異なる潮流(スタチンの使用率の違いなど)
が全て異なります。
これらのRCTは全て「誰がomega-3サプリにより最も恩恵を得られるか」という質問に答えるためのデータであり、20個近く大規模RCTが行われてきても、これはまだわかっていません。
そこで新しいRCTを計画しようとしたら、どのように考えるでしょうか。
「たぶんこの集団には効くんでないか」
という視点がかなり重要になるのは想像に難くありません。
逆に言えば、それこそがscientific knowledge gapとなり、新しいRCTを行うための最も強いmotivationとなり得ます。
(効かないだろう集団をターゲットとして何十億もかけてRCTを行うのは馬鹿げていますよね)
だから、似たトピックの新しいRCTというのは、「今までのRCT結果を踏まえ、たぶんその集団では効果が得られるだろう」という予想のもとに計画されることが多いです。
一方メタ解析とは
一方でメタ解析は、今まで出版されたRCTをsystematic reviewにより隈なく調べ、全てを平均した効果を推定する手法ですね。
これは、上記の考え方を全く考慮していません。
それどころか、たまたまサンプルサイズが大きい昔のRCTを大きく重み付けしてしまいかねません。
これは、いくら新しい考えで新しくRCTを行ったとしても、結局昔のRCTの結果に引っ張られてしまうことを意味します。
そんな結果、どれほどの意味があるのでしょうか。
しかも、せっかくRCTそれぞれが異なる集団や状況を対象としているのに、それを無視して「平均の効果」という「ぼやけた効果量」を推定するに終わってしまいます。
介入法さえ異なる場合が多く、そしたらなんの効果を見ているかすらわかりません。
こんな効果量を「最強」とみなす根拠はどこにもありません。
Systematic review & メタ解析とは、過去に行われた主要なRCTをチェックするための資料であり、メタ解析の効果量から何かの意思決定をすることは、あまり理にかなっていないと考えています。
*反論は受け付けています。コメント欄にお願いします。
ベイズ統計がよい
「いままでのエビデンスを踏まえ、最も新しいRCTを解釈する方法」があります。
それがベイズ統計です。
・どのようにいままでのエビデンスをまとめるか
・どのようなモデルを使うか
など考えることは多いですが、こちらの方が単純なメタ解析よりもinformativeだと思います。
最近はRを使えばimplementationも簡単なので、気になる方は是非いろいろな論文を読んでみてください。
まとめ
「RCTのメタ解析で有意だったから〇〇した方が良い」
というのは、あまりに思慮が浅いコメントです。
科学的な意思決定というのは、それぞれのRCTを踏まえた上で行われるべきです。
ぜひメタ解析の結論だけでなく、その中身のRCTもみてほしいと思います。
ではまた!